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七つの会議 | 野村萬斎さんが演じると、ぐうたら社員でもかっこよく見えるのはなぜか?

野村萬斎さんが演じると、ぐうたら社員でもかっこよく見えるのはなぜか?

無精髭にもさっとした髪、ビシッとしているとはいえないスーツ、だらだらとしていながらも鈍く光る唯一無二感、そのオーラ。

あらすじ

都内にある中堅メーカー・東洋建電。営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)はどこの会社にもいる、所謂“ぐうたら社員”。

トップセールスマンである課長の坂戸(片岡愛之助)からはその怠惰ぶりを叱責されるが、ノルマも最低限しか果たさず、定例の営業会議では傍観しているのみ。絶対的な存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める結果主義の方針の元で部員が寝る間を惜しんで働く中、一人飄々と日々を送っていた。

ある日突然、車内で起こった坂戸のパワハラ騒動。そして、下された異動処分。訴えた当事者は年上の部下、八角だった。

そんな中、万年二番手に甘んじてきた原島(及川博光)が新課長として着任する。会社の“顔”である一課で、成績を上げられずに場違いすら感じる原島。

誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。
だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた…

出典:七つの会議-映画・映像|東宝WEB SITE

物語の始まりの立ち位置的にはかっこよくないのに、八角民夫(野村萬斎)は何故かっこいいのか?

八角民夫がかっこいいのか、それとも野村萬斎さんがかっこいいのか?

八角民夫という男は物語の最初の時点でいうと、ただのぐうたら社員。もちろん、映画を見ている側としては、物語の主人公としての認知をしているわけではあるが、やってることからしてかっこいいことは何一つしていない。だがかっこいい。

この問いは良くなかった。なぜなら野村萬斎さんが演じる八角民夫がかっこいいのだから、分けて考えることなんてできないから。

かっこいいの在り処はどこだ?

“かっこいい”ってなんなのか、なにを見てかっこいいと思うのか。

だらだらと会議の場で寝ている。あげくバレてしまうという失態を犯してしまっている。

普通なら謝りまくる場面、なのに八角は“寝てない”と言い返す。

これがかっこよく感じた。それは表面の言葉ではなく、その芯となっている部分が揺るがないから、すなわち同様など一切せずに、“咎めるなら咎めてみろ、おれは誰にも変えられない”といった感が出ているのがかっこいいのだ。

その“感”を出しているものはなんだ?

言葉だけみてみると「寝てない」ってことだけでそこにはかっこよさは感じない。

では、言葉にかっこよさが含まれていないのであれば、かっこよさはどこから出ているのか。

やはり見た目がかっこいいわけだが、“見た目”ってなんだ?

言葉では無いならそれ以外の部分でしか考えられない、すなわち“見た目”。

でもその見た目というのもこれまた難しい。見た目と一言で言ってしまうと、単純に静止した瞬間の表面的なビジュアルでしかないように思ってしまうが、そうではない。

なぜなら、この八角は無精髭を生やしているし、髪はぼさっとしているし、スーツもビシッと着ているとは言えないのだから。

と、思うとかっこよさは、野村萬斎さんの演技に宿っているということになる。

細かく見ると背中が綺麗に見える独特の立ち方をしているし、少し脇の下も隙間が少し空いているような感じで立っている。

言うまでもなく、喋り方は独特の粘りがあるし、表情も特有の粘りを感じる、何より眼がいい、惹きつけられる。

物語が始まるタイミングから眼が語っていると言う感じ、“この人には何かある”としっかり感じさせている。

一人では出せないかっこよさなのではないか?

この八角民夫(野村萬斎)のかっこよさは、一人では出せないと思う。

この映画の世界に一人だけそういう飛び抜けたキャラクターがいるとただの違和感になってしまう。

そのキャラを成立させているのは、一番は北川誠(香川照之さん)でしょう。

ぐうたら社員である八角民夫、その真逆の位置にいるエリート的な北川誠。

最初の会議の時点で、あれだけの緊張感が出ていたからこそ、あれだけの弛緩ができた。

その緊張の世界であれだけのリラックスをできる男を只者ではないと認識し、そのカリスマに惹かれ、かっこいいと感じたのだろうと思う。

最初の問いへの答え

と、いうわけで。

“野村萬斎さんが演じるとぐうたら社員でもかっこよく見えるのはなぜか?”への答えは、「野村萬斎さんの演技はもちろん、その演技力を発揮させるための基盤がしっかりある、すなわち周りの俳優さんたちの演技力があるから」ということになりました。

|キャスト

野村萬斎
香川照之 及川光博 片岡愛之助
音尾琢真 藤森慎吾 朝倉あき 岡田浩暉
木下ほうか 吉田羊
土屋太鳳 小泉孝太郎 溝端淳平 春風亭昇太
立川談春 勝村政信
世良公則 鹿賀丈史 橋爪功 北大路欣也 

|原作 
池井戸潤『七つの会議』(集英社文庫刊)

|監督
福澤克雄